ご覧のページは、これまでのコンソーシアムのホームページを活用し、コンソーシアムの活動記録や資料等をアーカイブ化したものになります。



文化芸術による復興推進コンソーシアム設立記者会見

平成24年3月13日火曜日に東京・台東区にある東京国立博物館の平成館大講堂にて開催された文化芸術による復興推進コンソーシアム設立シンポジウムに先立ち、同日午後1時より東京・台東区にある東京国立博物館の平成館小講堂におきまして、本コンソーシアムの呼びかけ人の方々による記者会見が行われました。この記者会見にはテレビ、新聞など各社から取材の方々に多くお越しいただき、呼びかけ人の方々のご発言の後、質疑応答も行われております。このホームページでは、呼びかけ人の方々から頂戴いたしましたお言葉の要約を、ご発言された順にご紹介させていただきます。


近藤誠一氏(文化庁長官)

東日本大震災からちょうど一年が経過したわけでございますが、これからの東北の復興の過程において、文化芸術の果たす役割が非常に重要であるということの認識が、日増しに高まっていると思います。文化庁といたしましては、これまですでに被災した文化財の応急処置や修復をやってまいりましたが、復興の過程において、それに携わる方々の心の支えになる広い文化芸術活動が今後重要になってくると考えております。しっかりとした体制をつくり、官民が総力を挙げて持てるすべての人材と財源、才能を投入し、これから長く続くであろう復興の過程に文化芸術の力を投じていきたいと思い、本コンソーシアムを立ち上げる次第です。呼びかけ人の方々、そして賛同していただける方々と一緒に、この4月末から具体的にコンソーシアムを運営していく所存です。このコンソーシアムという言葉はなかなかわかりにくいと思いますが、いわば緩やかな連合体とでもいいましょうか、いろいろな組織が共通の目的のために集まって、それぞれの知恵を出し合い、力を出し合って目的を達成するということでございます。文化芸術はひじょうに幅の広い分野で、地元のさまざまなニーズに立ったお申し出をうまくつなげていくことは気の遠くなるような作業でございますが、まさにこのコンソーシアムがなすべきことではないかと思っております。


野村萬氏(社団法人 日本芸能実演家団体協議会会長)

能の大成者である世阿弥は、芸能というものはすべからく多くの方々に愛され、親しまれ、そしてご支持を頂戴しなければならないという趣旨の言葉を残しております。そのご支持によって何百年という伝統を経て今日があるわけでございますので、このたびの国難にあたって、私どもは芸能のもてる力をしっかりと発揮をして、これまでの恩返しの心でご奉仕しなければならないと思っております。コンソーシアムの事業内容に「つどう・つなぐ・つたえる・しらべる・つづける」と書かれております。伝統や伝承というものを通じて養われた心を大切にし、一過性に陥ることなく長官のお呼びかけに賛意を表し、芸能のもつ活力というものを信じて、皆様とともに参画をして参りたいと思っております。


都倉俊一氏(一般社団法人 日本音楽著作権協会会長)

私は幾度か被災地を訪問させていただきました。本当に想像を絶する辛い状況の中で、私に語りかけてきた被災者の皆様が一番強調されたのが「心が和みたいんだ」ということでした。私は音楽家ですので音楽でいろいろなことにご協力したいと願っているのですが、芸術というのは、これから被災者の方たちに一番大切なものになると思います。物の復興、町の復興とともに心の復興、これを成し遂げるために何かご協力ができるのではないだろうか。素晴らしい絵、野村会長がおっしゃったような日本人の遺伝子の中にある伝統芸能、また我々の音楽、こういうもので被災者の方々の心の復興を少しでもお助けできればと、私は願っております。今まで我々は、ばらばらにいろいろなことをやってきたわけですが、近藤長官のこのコンソーシアムへの呼び掛けに対し、私どもはひじょうにありがたく賛同させていただいた次第でございます。


紺野美沙子氏(俳優/朗読座主催/国連開発計画親善大使)

昨年の3月11日以降、実演家の一人といたしまして、いざというときには無力であると思っておりましたが、近藤長官の「こんな時だからこそ文化芸術にできることがある」というお言葉に背中を押されまして、自分らしくできることは何かということを考えてまいりました。自分らしくと考えたときに、二年前から朗読座という朗読の活動をしております。それは人間生きていると辛いことや悲しいことがあるけれど、美しい物語や音楽を通じて、皆さんがホールに集ってくださった時間だけは心穏やかな一時を過ごしていただきたいという想いで始めたものです。2月の末と3月のはじめ、朗読座の公演で東北3県を回って参りました。何か活動を始めたくても、なかなかきっかけがつかめないという文化芸術関係の方がたくさんいらっしゃると思います。このコンソーシアムの設立で、多くの方たちが支援への第一歩を踏み出せたら、そういうきっかけになればと思っております。


宮田亮平氏(東京藝術大学長)

東京藝大では3・11以降学生があらゆる角度から震災復興支援を考え、「藝大で何かをしたい。そのためには目的のはっきりとした募金をしよう」という話になりました。文化財、文化芸術に特化した募金活動を始め、日本ならびに世界中から多くの募金をいただき、それで文化財レスキュー隊というものをつくらせていただきました。震災から一年が経ち、大きく何にという目的がはっきりとしたことで、5年10年と続けていけるのではないかという気がしております。それと同時に、若者を育てている大学としては、次世代の彼らがどういう生き方をしていかれるのかを考えます。残念ながら震災以後は白いキャンバスから黒いキャンバスに一瞬にして変わってしまいました。そこに何が描けるのか? 何がつくれるのか? という目線をきちっと備えていかなくてはいけない。これは東京藝大のみならず、全国の公立・私立の大学に共通していることでございます。息の長い人間関係をつくれるような若者を育成しつつ、多くの人を巻き込んでこのコンソーシアムに参加していきたいと思います。


コシノジュンコ氏(ファッションデザイナー)

この一年間、私なりに考えて支援活動をしてまいりました。思ったこと、できることを、みんなが心を一つにしていくその気持ちがすごく大切なのですが、今後ずっと続けていくことができるのか? という気持ちもまた一方にございます。復興は短期間で解決する問題ではなく、長期計画でいかなくてはならないことです。現地の方たちの「仕事がない」という言葉が印象的で、それはお金というより将来の元気の源である仕事がないことです。私たちの企画で今後できることは、東北独特の文化を立て直し、文化都市として再建するという前向きの大きなビジョンを立てて実行することだと思います。あらためて3・11を忘れないための素晴らしい計画を立て、それを協力してつくっていけば、都市にまた産業が生まれるかもしれません。今後の大きな計画をみんなで立てて実行していく“やる気”こそが、大切なことなのだと思っています。


福原義春(公益社団法人 企業メセナ協議会会長)

わたくしどもは昨年3月23日に、GBFund(東日本大震災 芸術・文化による復興支援ファンド)を設立し、この一年、文化による復興支援に取り組んで参りました。このファンドに集まった寄付は被災地の芸術・文化活動に助成する仕組みです。お陰様で寄付総額は6000万円を超え、これまでに89件の活動に対して約4600万円の助成を行いました。その中で、地元で受け継がれている祭りや伝統芸能を絶やさず続けていこうという気持ちが、震災で分断されたコミュニティーを再び結束させるということがわかりました。そういう意味でも震災復興において文化による地域再生は重要なテーマであると言えます。私どもは現地で今何が必要かに応える形でGBFundを運営してきたわけですが、被災地のニーズは変化を続けております。そして支援要請は途切れておりません。一方で震災に対する関心は直後に比べると落ち着いてきたわけです。その中でこのコンソーシアムは文化・芸術による震災復興に対する社会からの関心を高め、被災地に寄り添った形で支援を続けていくためのプラットホームになればと思っております。


茂木賢三郎氏(独立行政法人 日本芸術文化振興会理事長)

わたくしどもは国立劇場の運営管理を行なっている独法でございますが、平成23年度の計画におきまして、このたびの大震災の被害に対する復旧の情報を踏まえて、振興会全体で文化芸術による支援に取り組んでいくことを明確に示したわけでございます。平成23年度は国立劇場、国立演芸場に被災者の方々をご招待したり、新国立劇場、国立能楽堂による被災地での公演や体験教室なども開きました。今後も『国立劇場チャリティー歌舞伎公演』や『小中学生のための歌舞伎入門教室』の開催が決まり、当振興会が行なっている芸術文化振興基金等による文化芸術活動への助成事業の分野に関しましても、被災地のみなさんのために支援ができないかと昨年から動き出しております。私どもは、当振興会が行なっている各事業に有効な手立てを加えて被災地復興支援の一助となるよう進めてきたところでございますが、今後は本コンソーシアムの一員として、コンソーシアムとして何ができるかということについても、本日ご出席の皆様と共に検討を進め、被災地の方々のお気持ちを踏まえて、息の長い支援を行なって参りたいと考えております。